2022/09/11
都市の終わり
深夜徘徊でこれはといった発見はないこのごろだが、20代前半の「若者」が路上などでたむろしている姿はまえより多くなった。ジョガーはいるが、数は増えない。「孤独」な独り歩きはほぼ皆無。「ハウスレス」の数も減った。気候のせいで、別に特定の場所を選ばなくても、寝る場所はいくらでもあるからでもあるが、明らかに都市への執着が落ちている。
集団を組むのは人間の本性だとして、コロナで高まったリモート主義を否定し、表向きだけ変えた「SDGs」型都市論などが浮上する気配もあるが、そもそも「都市」という概念が終わっていることがわかっていない。たむろする「若者」も、深夜には姿を消す。朝までワイワイたむろするのなら、新味があるのだが。深夜に無人化する都市はもう、これまでの意味での都市ではない。
そのうち、深夜の都市が「無人化」しているのを「有効活用」しようと、VRやARを使った「ひと」や「もの」を街路に配備し、都市らしさをつくろうような企画が出てくるかもしれない。が、そんなことをしても、リモート志向は衰えず、自分はカプセル的な屋内に引きこもることを選ぶ人間の増大は減らないだろう。そもそもそういう「メタバース」空間は、リモートでも住み込める。
バノンとトランプのその後
先日、法廷侮辱罪で起訴されたスティーブ・バノンが、今度はマネーロンダリングと詐欺の罪で起訴された。この件は、2020年のむしかえしである。「雑日記」の 2020/08/21 で触れたが、その罪をトランプは、「恩赦」で解除した(2020/01/26 参照)。
しかし、大統領の「恩赦」というのは、あくまでも連邦規模のもので、バノンは、これでとりあえず収監はまぬがれたが、2020年8月の起訴は、州レベルのものであったために、今回の再起訴となった。こちらは、法廷侮辱罪とはちがって、かなりの重刑をまぬがれまい。
わたしは、2020/08/21の記述では、この起訴の裏には、意外と、なれあい的なリークもあったのではないかということを示唆した。つまり、当時、バノンとクシュナーとの関係が悪化し、トランプは、最終的にクシュナーを取り、バノンを捨てたというのが表向きだが、この起訴はそれを正当化するためのものだったのではないかと。また、うまく行かない壁建設の口実を作るためのやらせということもありえると。
バノンは、おそらく、そういう屈折を承知のうえで身を引いたのではないか? どうせ恩赦でトランプが助けるということになっていたのかもしれない。いずれにしても、その後もバノンは、背後からトランプを支持しつづける。そもそもバノンは、 2016/11/20 で紹介したように、「わたしはテューダ朝時代のトマス・クロムウェルだ」と豪語していた。どんなにコケにされてもトランプを支持するのをやめないというのだ。
だから、彼は、9月8日にマンハッタン地方検事局に出頭した際、「やつらは俺を最初に殺さなければならないんだろう」( They Will Have To Kill Me First) と言い、翌日には他所で、「昨日は人生最上の日だった」 (Yesterday was one of the best days of my life,)と胸を張った。まるでスター気取りであるが、現実は、彼を映画のクロムウエル(『わが命はつきるとも』のポール・スコフィールド)のようにはしてくれない。
今度の起訴は、メキシコとの国境に壁を建設するというトランプのキャンペーンを利用して献金者をつのり、集まった金を仲間とふところに入れてしまったというものだから、トランプの関与も徹底的に追求する。つまり、トランプも無縁ではなく、先日のFBIによるガサ入れで問題になりつつあるトランプの「国家反逆罪」の容疑を経済詐欺的な側面から支援することになるかもしれない。
マスメディアは、最近、トランプの写真を載せるとき「悲壮」な表情のものを使う傾向があり、明らかに、反トランプ路線に向き始めている。
しかし、トランプは、起訴され、入獄したとしても、今度は獄中立候補し、逆にアメリカ好みの「反逆者」として人気を高め、2024年に大統領に返り咲くという推測もある(→参考)。これでは、また当分はトランプ現象から目を離せない。