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シルクウッド/ビデオドローム/リキッド・スカイ
ヴィデオの普及は、テレビの見方を変えただけでなく、映画の見方をも変えつつある。そして、ヴィデオはテレビや映画の作り方とそれらの放映・上映方法をも変えようとしている。
映画の封切りと同時にヴィデオを売るというやり方も定着してきた。『南総里見八犬伝』『翌フ谷のナウシカ』『lバーエンディング・ストーリー』などは、映画館で当たっただけでなく、ヴィデオでも大きな収益をあげた。
映画館で映画を見るのと、ヴィデオで映画を見るのとでは、大きな違いがある。劇場のスクリーンに映る映像の奥行きをブラウン管で体験するのは難しい。しかし、ヴィデオで映画を見ることを、もう一つの映画の見方だと考えれば、歓迎すべき点も少なくない。
プルトニウム工場の劣悪な環境で働く女性労働者をあつかったマイク・ニコルズ監督の『シルクウッド』は、アメリカではなぜかロードショウが早々と打ち切られたが、そのヴィデオはロングセラーになった。ヴィデオが〈名画座〉の役割を果たしたわけである。
日本の場合、もっと早く輸入されてよい外国映画は少なくないが、すでに一部の映画ファンのあいだにヴィデオで浸透していたために、リスクを覚悟で輸入された作品が、予想外の〈当たり〉をとる傾向も出はじめている。『ビデオドローム』や『リキッド・スカイ』は、まさにその例である。
モスクワ出身のスラバ・ツッカーマン監督による最初のアメリカ映画『リキッド・スカイ』(東映配給)は、ヴィデオ・アートの技法も取り入れているので、ヴィデオには向くタイプの映画だが、映画で見ると、ヴィデオではわからなかったディテールや動きが見えてきて、別の作品を見るような気持になる。ニューヨークの都市映画としても、実にユニークだ。
ヴィデオが映画を変え、映画がヴィデオを変える時代がはじまった。
[シルクウッド]前出[ビデオドローム]前出[リキッド・スカイ]監督=スラバ・ツッカーマン/脚本=スラバ・ツッカーマン、アン・カーライル/出演=アン・カーライル、スーザン・ドーカス他/83年米◎85/ 7/27『神戸新聞』
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