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若き勇者たち

 アメリカ映画が一時の活気を失ったということは最近よく言われるが、『風とライオン』や『コナン・ザ・グレート』の監督ジョン・ミリアスが『若き勇者たち』のような映画を作るようでは、アメリカ映画もこりゃアカンという気がしてくる。
 この映画は、れっきとした〈反共映画〉が、これほど露骨に〈反共精神〉をむき出しにした映画が大手の映画会社で作られることは、〈赤狩り〉のマッカーシー旋風が吹き荒れた一九五〇年代以来、久しくなかったことだ。一体、アメリカはどうなっているのだろう。本当に、第三次世界大戦も辞さないつもりなのか。
 映画は、第三次世界大戦が核戦争ではなくて旧来の地上戦で終始したという想定で、その発端のエピソードを描く。ある日の早朝、コロラド州の小さな町に突然パラシュート部隊が降下し、町の人々を片っ端から自動小銃で殺してゆく。それは、ソ連、キューバ、ニカラグアの連合軍の侵略部隊で、ついに「赤」(原題は?嚼ヤい夜明け』jはアメリカに侵略戦争を仕掛けてきたのである。
 似たようなテーマの映画は、これまでもなかったわけではないが、この映画ほど「祖国のため」とか「国家のために自分を犠牲にする」ということを繰り返し強調するのは、アメリカ映画では珍しい。国家ぎらいがアメリカ文化の根強い伝統だったのに、である。
 しかも、この映画で「祖国」のために戦い、「祖国の自由」を守り抜くのが若い高校生たちであるというのは、何とも空恐ろしい感じがする。彼らは、侵入軍の目をからくも逃れ、山にこもってゲリラ部隊を組織し、反撃に出る。彼らは、確かによくがんばるが、仲間のあいだから敵と密通する者が出ると、それを容赦なく処刑してしまう。「祖国を裏切った」というのである。
 いまはまだ映画のなかだけの話だが、アメリカではそのうち〈非国民〉を本気で私刑にかける若者が出てくるかもしれない。
監督=ジョン・ミリアス/脚本=ケビン・レイノルズ/出演=パトリック・スウェイジ、リー・トンプソン他/84年米◎84/11/22『共同通信』




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