粉川哲夫の「雑日記」

top page   ◆「雑日記」総見出 1999年〜
2025/12/13 

トランプ・コンドーム (2025/12/13)

日本時間の12月13日の未明、ニュースで、下院監視委員会(The House Oversight Committee) が、新たに約100,000点のエプシュティン関連文書を公開したことを知った。

BBCやAPやCNNの報道には、資料のなかにあった写真のなかから若い女たちといっしょのトランプや、ビル・クリントン、ウッディ・アレン、もちろんアンドリュー王子(元)などのほか、トランプの顔をあしらったコンドームらしきものの写真、性具などがこれ見よがしに掲載されている。

 → 【参考】

それは、それで意味があるかもしれないが、こういう記事は、大手のいわゆるコーポレイトメディアでは、ほとんど内容が同じで、こういう写真を掲載しても、トランプの「性犯罪」はおろか彼の長期にわたる金がらみの不正をあばくことはできない。

エプシュティン問題は、いま、もっぱら「少女陵辱」の観点からの批判が主流だが、こういう観点からでは、トランプがエプシュティンとつるんで犯したであろう犯罪の真相はまったくあらわにはならないだろう。

そのうえ、発表から1日たって、企業メディアのニュースを再見すると、「トランプ・コンドーム」とか性具などの写真がはずされていたりもする。当然、トランプ側から圧力が加えられたのか、いわゆる「忖度」だろう。なにせ、体制批判を標榜していても企業メディアは、現政権に完全に背をむけては商売ができない。

監視委員会が発表した資料で重要なのは、写真よりも、むしろその大半をしめるテキスト文書であり、会計書類である。

 → 【12/12に発表された全資料】

結局、問題は金(カネ)なのだ。トランプとその一党が、自己の権力増強のためにいかにして金を操作し、本来は「弱者」を守るべき法をふみにじってきたかである。

今回の資料のうち、分類名「NATIVES」の下にあるエクセルファイルには、トランプを含む財界人や企業の名前が見えるが、取引の周囲事情を知らなければ、ここから「不正」を引き出すことはむずかしい。その解析には、専門家による長期の時間が必要となるだろう。

(クリック→拡大)

が、なんでも長期化させてうやむやにするのが得意なトランプは、余人の想定外の新手を打ち出すから、公開された会計資料をすばやく読んで、そこに問題を読み出すような努力と才能がただちに出てこないと、せっかくの資料が無駄になってしまう。

そういうわけで、(トランプ政権が「エプシュティン・ファイル」を公開しなければならない期限の)12月19日(現地時間)までに司法省が、新たな資料(監視委員会の発表したものとは別の資料)を発表するとしても、すでに司法省は何千時間もかけて編集(表向きの理由は、少女陵辱の被害者の人権を守る云々)している以上、トランプの「犯罪」を決定づける証拠を見つけるのはますますむずかしくなる。

トランプがやってきたことを見ると、「超党派」とか「憲法」の優位性とかいうものが、所詮は支配政党の金銭的利害でどうにでもあんばいできることが明白になる。これは、日本では、とうの昔に知られていることだが、それは、たまたま露呈しても、いつのまにかうやむやになってしまう。その点、アメリカは、露悪的なまでにあらわになり、喧々諤々の騒動になるところがちがう。むろん、それは、アメリカが「正義」を尊重しているからではなく、そういうことが「ショウビジネスと」して商売になるからという要素が大きい。こちらのほうも、金で動いている。

最近、明らかにトランプの風向きはよくない。彼がたくみに各省に突っ込んだ「子分」がそろって法律的なヘマを犯し、罷免と辞任の瀬戸際に立たされている。

これまでの支持者が、なんでも「俺が」のトランプ節の嘘にうんざりし、これでは来年の中間選挙で地元の票を失うという不安にかられ、トランプとたもとをわかったり、距離を置いたりしはじめた。

風見鳥の企業メディアを見れば、トランプはいよいよ老い、末期的な老害症状を呈しているという批判報道が目立つようになった。しかし、事実は、トランプはもともとひどかったのだ。だから、企業の金が流れ込んでいない「インディペンデント・メディア」は、むかしもいまも、あいもかわらずトランプを腐すしかないのだ。

そういう文句は念仏化し、聴いているときは楽しいとしても、先は見えてこない。実際、もしトランプについて報道するとしたら、文句と罵詈雑言しかないわけだ。

その点では、「政治ジャンキー」を自称するジェニファー・ヴェルチとアンジー・“パンプス”・サリヴァン (Jennifer Welch and Angie “Pumps” Sullivan) がやっているポッドキャストの 「 I’ve Had It」(もううんざり)は、くりかえし、「汚い言葉でごめんね」とジェニファーがしばしば言うように、トランプへの罵詈雑言としては痛快である。

最近のポッドキャストを視聴していると、かつて、テレビ全盛の時代に、ケーブルテレビが登場し、テレビの表現規制からはずれている条件を逆手にとって体制メディア(企業的しがらみだけでなく、既存の慣習的しばりにがんじがらめになっていた)が出来ないことをしてみせたのを思い出させる。

おそらく、ポッドキャストも、「チャンネル登録」数を増やそうとしているところは、既存メディアの「視聴率」への執着につながるところがあるから、有名になればなるほどコンヴェンショナルなメディアと変わらないものになるだろうが、いまのところは、いい線を行っているのがけっこうある。過渡期の面白さだ。

たとえば、訴訟弁護士のマイケル・ポッポック (Michael Popok) が率いる「 Legal AF」は、トランプをめぐって起こされている訴訟や、トランプの法的不正を日々監視し、詳細な法的事実を速報で報道している。このチャンネルは一聴の価値がある。

こういう地道な活動を粘り強く続ける以外には、トランプのたくみな権力増強活動の欺瞞とからくりを暴くことはできない。