2024/01/28
ジョージア州フルトン郡刑務所にトランプが出頭した8月24日以後も、毎日のようにトランプショウは続いた。トランプの自己露悪的なふるまいのニュースがメディアに出没し続けたが、どれもこれも「週刊文春」的なトーンで、何もここで取り上げる必要はないと思い、無視するうちに日がたった。
TDSとは、「トランプ錯乱症候群」(Trump Derangement Syndrome)と訳され、もともとは、トランプを軽視する共和党内部の政治家やいわゆる保守勢力をからかう用語であった。が、いまや、TDSは、最初からトランプには批判的であったが、その批判が一向に報われない民主党よりのひとびとの拒否反応の名称になった。
アメリカ人でもなく、民主党に肯定的な想いを寄せているわけでもないわたしの場合は、そういうひとびとの場合よりもより複雑である。
まず、アメリカ人とは無関係であるにもかかわらずトランプのことを考えなければならないという不条理。
次に、野次馬としても、トランプをめぐって展開される「ドラマ」自体の納得いかない矛盾。
最後に、最初はバカみたいで、どうせそのうちコケるだろうと思っていたトランプが次第に成長し、したたかな確信犯、さらには「純朴」な層のなかで「救世主」のような存在にのしあがってきた予想外の展開だ。
メロドラマを観て泣いてしまい、その単純さを恥じるのに通じる単純な憤りを感じること自体にも腹が立つという屈折した不快さもある。
演出する側が、こうすれば観客が泣くだろう、怒るだろう、笑うだろうと百も承知で、どうだまいったかと笑みを浮かべているのが見えたときのこんちくしょう気分だ。いや、ドラマなのだからそんなのあたりまえだろうとわかっているつもりでいて、そのくせ平静ではいられない自分に腹が立つのだ。
トランプは、現在、91件の重罪で4件の刑事訴訟を受けているが、少なくとも共和党内と「レッド・ステイツ」「スイング・ステイツ」と呼ばれる州のトランプ支持者はますます結束を固くし、トランプが裁判でどんな判決を受けようがビクともしない気配である。そこではトランプは「カルト教祖」化しており、トランプ自身も、演説の調子からみても、そう思って研鑽を重ねているようだ。
虚言、大嘘はとどまるところを知らないうえに、そのなかに明らかに「ボケ」や「思い違い」と受け取られることをねらった二重括弧でくくるべき「「嘘」」や「「誤認」」も忍び込ませる。これがひねったアリバイ作りでもあることは言うまでもない。こうなると、「あいつはバカだなぁ」と溜飲を下げていたつもりの批判的なメディア(The Late Show with Stephen Colbert - CBS、SNL - NBC、Late Night with Seth Meyers - NBC、Jimmy Kimmel Live! - ABC等々)も足をすくわれる。
実際に、これらのメディアは、トランプを権力の座から引き下ろすなんの役にもたたず、トランプ自身が自由に出来るSNS、Truth Socialの引用に終始している。奴はそれを承知のうえで書いているのだ。
> TDSは、罹る側の条件もあるが、治るということはないだろう。ならば、今年もトランプにつきあってやろうじゃないか。さいわい、1月26日(現地時間)、ニューヨーク市の連邦法廷が、トランプに対して、コラムニストE・ジーン・キャロルに対する強姦および名誉毀損の罪で8,330万ドルの罰金を陪審評決した。次回は、これについて書いてみたい。(続く)