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デニス・ホッパー

 メイジャーな世界で仕事をしながら、五十をすぎてもそこに安住せずに、その世界をたえず異化しているというのは、至難の技だ。それが、活字の世界ならまだしも、売れなければすぐホサれてしまうハリウッド映画の世界では、並大抵のことではない。
『イージー・ライダー』でカウンター・カルチャーのヒーローになったデニス・ホッパーは、今年(一九八九)五十三歳だが、彼の演技と映画作りは、ますますスゴ味を増している。最近では、『ブルー・ベルベット』で演じた狂気の暴力的なキャラクターがスゴかった。全米のテレビを電波ジャックしてファシストの大統領候補を失墜させてしまう『アメリカン・ウェイ』の海賊テレビのリーダー役は、ほとんどホッパーの地をいっていたし、彼が監督した『カラーズ/天使の消えた街』は、少年ギャングたちのすさまじい世界をどぎつく描ききった。
 ホッパーの仕事と生活を詳細にたどったエレナ・ロドリゲスの『狂気からの帰還』(綾部修訳、白夜書房)によると、すでに十八歳の彼が、テレビ・シリーズのためのオーディションで「てんかん患者」の演技をしたとき、演出家は、「バカな仕出し屋が本物のてんかん患者を寄越したのだと思いこんだ」というが、彼は、子供の頃から狂気と暴力の淵をさまよってきた。
 彼のモットーは、「嘘をつかず、やりたくないことは何もやらない」ことだという。本書には、それをやり抜くために彼が払った数々の代償のエピソードが記されている。
[イージー・ライダー]監督=デニス・ホッパー/脚本=デニス・ホッパー、ピーター・フォンダ/出演=デニス・ホッパー、ピーター・フォンダ他/69年米[ブルー・ベルベット]前出[アメリカン・ウェイ]監督=モーリス・フィリップ/脚本=スコット・ロバーツ/出演=デニス・ホッパー、ユージン・リピンスキー他/86年英[カラーズ/天使の消えた街]前出◎89/ 7/24『すばる』




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