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一九八二年度外国映画ワースト5

①E?MT?M②レッズ③華麗なる陰謀④ロアーズ⑤メーキング・ラブ
「ベスト10」をえらぶからには、まず「ザ・ベスト」が決まらなければどうしようもないのですが、今年(一九八二年)はどうも、これぞと思うものがありません。そこで「ベスト10」を棄権して「ワースト5」を考えることにします。
 こちらは「ザ・ワースト」がすぐ思いつくので簡単です。ついでに「ワースト50」ぐらいまでえらびたいくらいです。
 さて、何といっても「ワースト」ナンバー・ワンは『E.T.』でしょう。その宣伝の大衆操作のすさまじさと予期された反応は別にして、その最悪さは、映画にとって俳優の演技などというものは問題ではなく、生きものの形をしたおもちゃでも、それをあやつる者次第で思いのままの効果が出せるということを立証したことでしょう。
 マリオネットや文楽の人形とちがってE・Tは人形ではなく映像であることに注意すべきです。映像操作によって生ま生ましい人間や生物をつくり出そうとする試みのなかには人間=コンピューター論や生物=機械論の発想が隠されていますが、そういう映像としての生きものによりリアリティを感ずるのは、コンピューター・ゲームとナルシシズムの文化の時代に特有の困った現象です。映像がつくり出すものは、もっとウソくさいか、グロテスクなものであってこそ映画は解放のメディアになるのに、スピルバーグというヒトは、スウィートな顔をしてあんなに抑圧的な映画をつくるんだから、悪いヒトですね。
『レッズ』は、観客が少しでもジョン・リードやルイーズ・ブライアントのことを知っていれば、映像のウソっぱちがことごとく目について、その意味では「ベスト10」の上位に推したい映画ですが、実在の人物へのインタヴュー・フィルムなんかを挿入したり、パラマウントがアメリカやオーストラリアで『ディスカッション・ガイド』というこの映画であつかわれている時代・社会背景を解説する参考資料などを配布して、この映画があたかも歴史のひとこまを記録しようとしているかのようなポーズをとっているのが、「ワースト」の資格十分です。
『華麗なる陰謀』のおもわせぶりな〈社会批判〉(ただし、いまや公害と化したジェーン・フォンダの反アラブ主義が露呈しているのは見もの、 『ロアーズ』のインチキな〈自然主義、『メーキング・ラブ』のしたり顔の〈ホモセクシュアル理解〉も、似たような意味で「ワースト」に価します。
[E?MT]前出[レッズ]監督・脚本=ウォーレン・ビーティ/出演=ウォーレン・ビーティ、ダイアン・キートン他/81年米[華麗なる陰謀]監督=アラン・J・パクラ/脚本=デイヴィッド・シェーバー/出演=ジェーン・フォンダ、クリス・クリストファーソン他/81年米[ロアーズ]監督・脚本=ノエル・マーシャル/出演=ノエル・マーシャル、ティピット・ヘドレン他/81年米[メーキング・ラブ]前出◎82/12/20『映画芸術』




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