粉川哲夫の「雑日記」

Polymorphous Space
「シネマノート」
ラジオアート
送信機・テクノロジー・本ほか
「ツイッチャン」
最初の「雑日記」(1999年)
ストライキとラジオ (2019/12/14)

Maison_De_La_Greve

マスメディは報道しないが、黄色いヴェスト運動以後、そして今度の「ストライキ」のさなかにも、フランスでは、マイクロラジオ局がいくつも生まれた。

そのなかには、日本のミニFM自由ラジオを見習ったものもあるが、これまでの自由ラジオやマイクロラジオとちがうのは、当然のことながら、ネットが不可欠になっている点だ。ネットでライブストリーミングをやるのもあれば、電波はかぎられたエリア(ときには室内だけ)で出し、そのサウンドをSoundcloudにアップし、アルカイブ的な形で公開するのもある。

laradiodurond

フランス北西部のブルターニュの La Radio du Rond Point(円形交差点)は、「6ヶ月まえにささやかな、黄色のヴェストラジオを立ち上げた」。そしてこの局は、ストライキの始まった「12月5日にはフル回転になりました」と主催者のポリーヌ(Pauline Chevallier)は言う。週に3回放送し、最新のファイルは、"ON MONTE D'UN CRAN" というシリーズの1の「ゼネスト」(Greve Genérale) である。

リンク

"On monte d'un cran"というのは、英語では"pump up .."の意味で、明らかに、ミニ海賊放送にあこがれる者たちがよく見た映画 "Pump up the Volume"(邦題「今夜はトーク・ハード」1990)にひっかけている。

ちなみに、Pump up the volumeは、「音量(ボリューム)をぐいっと上げろ」という意味と同時に、既存のものを(その音で)消してしまえ、といった造反の意味だった。なお、最近では、自分の排便や排尿の音をトイレで消すために水洗トイレのレバーを押すことを意味するそうで、なるほど、いまの状況を示唆してあまりある。

トップの写真は、落書的にストライキ下の運動状況を報じる「Maison De La Grève Online」(ストライキの家オンライン)局の画面。(2019/12/14)



「黄色いヴェスト」運動は続く (2019/12/08)

arton2523-resp1440

lundimatinに載った記事(#219, le 4 décembre 2019 )が最近のフランスの状況のみならず、今後の世界の動向を決する動きを見事に記述している。

《12月5日とそれ以後、事はシンプルになる。ストライキそのものである黄色のヴェストが、策略や小細工を終焉させるのだ。》《正常にもどることはないだろう。なぜなら、正常であることが問題だったからである。》

この日とその後のために臨時に開局されたラジオ局RADIO D’AUTODÉÉFENSE POPULAIREは、「バリケード・ラジオ」という概念を提起している。ただし、このタイトルから、Twitterで有名なダンスミュージックのDJ局と混同してはいけない。バリケード・ラジオとは、"radio barricade d'info en direct"つまり、戦線の最前線の情報を直接伝えるラジオ局である。

ただし、時代は60年代ではない。「戦線」はいまや、集団から個々人、さらにはその皮膚から神経のすみずみまで拡大深化した。そして、ミクロな戦線こそがますます決定的な意味を持つようになっている。だから、雑多なものがまじりあい、交錯し、流れ込み、流れ去る場としてのラジオが本領を発揮できる。今後、RADIO D’AUTODÉÉFENSE POPULAIREのような局がどんどん出現するだろう。(2019/12/08)