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2013年09月02日 03:42
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3Dの謎
3D映画はそろそろ終わりになるかと思ったら、そうはならなかった。あんな〝ふるい〟技術を引っ張り出してきて、何をするのだと思っていたが、事情はそうではないらしい。
今年も、『スタートレック イントゥー・ダークネス』、『マン・オブ・スティール』、『パシフィック・リム』、『ワールド・ウォー』などの3D映画を見た。
最近の3Dの傾向は、向こうから矢が飛んできて観客がのけぞるといったものは少ない。3Dメガネをはずしても、(むろん、画面は二重にはなるが)さほど違和感がない。
じゃあ、どうして3Dなのだということになるが、その理由がわかった。あるとき、メガネをはずしていたら、隣の女性がケータイを見ているのに気づいた。なるほど、3Dメガネをしていると、はたでケータイを使われても気にならないのである。
しかし、ケータイ対策もさることながら、3Dは、もっと深刻な事情に応えてもいる。それは、『ワールド・ウォー』を見ているときに思ったのだが、3Dの映像というのは、意外と小ぢんまりしているのだ。おそらく、いま、観客の視野が狭まっているのではないか? ケータイやスマホの小さな画面で映画を見ているひとが増えているが、それが標準になってくると、映画のスクリーンの画面はあまりに大きすぎて、落ち着かないという観客も出てくるだろう。
競馬馬で眼に眼帯のようなものを着けているのがいる。これは、英語で〝Blinker〟、邦語で〝遮眼革〟というそうだが、要するに、3Dメガネというのはこのブリンカー効果を持っているのだ。これで視野を狭め、社会的視野狭窄を補償する。
当面、裸眼で視野をヴァーチャルに拡大し、スマホで映画を見ていても、200インチ以上のスクリーンを見ているのと同じ効果を出すような装置が出来そうにはないから、当分、3Dは続くように思われる。
が、劇場空間で他人といっしょに映画を見る習慣は崩れつつあり、個々人で〝孤独〟に映像を見るのを好む傾向傾向が強くなってきているから、劇場での3D映画はどのみち消えていくだろう。しかし、それは、映画館の映画がなくなるということをも意味するから、映画産業にとっては、困ったことである。