「シネマノート」  「雑日記」


2008年 10月 29日

●情報資本主義の「常態」化

京橋で試写を見て、東京駅の近くの本屋で書評のための本を探し、駅の方に歩きだしたら、大通りに面した証券会社の正面の壁に長く延びた電光掲示板が株価の変動をリアルタイムで流していた。それは、まるで昔のパチンコ屋やキャバレーの看板のようにどぎつく、猥雑だった。さあ、株がこんなに変動してます、チャンスを見つけて買いましょう!というわけだ。
しかし、これは、軽蔑すべきことではなくて、現実だ。資本主義は、1971年にドルと金の交換を廃止して以来、「情報資本主義」の道を歩み出した。アメリカは、その後、戦争経済などを復活させて、そこからの後戻りをはかろうとしたりもしたが、湾岸戦争、イラク戦争の果てに今日の「恐慌」にたどりついた。
だが、これは、政策の失敗や事故の結果ではない。毎日のように株価が危機的に変動するのが、情報資本主義の特質なのだ。だから、このシステムの別名を「ギャンブル資本主義」とも言う。このへんのことは、1980年代以来何度も書いた。『情報資本主義判』(1985)という本もまとめた。
いま、株が下がり、マスメディアは「大恐慌が来る」と騒いでいるが、その「恐慌」を1929年から1930年代にいたる「大恐慌」のイメージでとらえるのは誤りだ。いまの「恐慌」は、利潤が「実物経済」によってではなく、情報の操作で動くという情報資本主義の「常態」であって、少しも異常なことではない。
とはいえ、日々変動する株価や通貨を見ていると、日本は、確実に欧米にほされているという感じがする。こういう事態になると、個人投資家は無力であり、グローバルな通信回路と通信手段をもっている組織が有利であるわけだが、欧米とりわけアメリカの市場の変動に一歩も二歩も遅れて対応せざるをえない日本のマーケットは、いいカモである。
今日株価が上がると明日には一斉に売りが加速し、明後日はまた株価が下がる、そして次の日は買いが殺到して株価が上がり、次の日は猛烈な売りが始まる・・・。この繰り返しのなかで差益を設けるのが、情報資本主義の技法なのである。
そんなことをくりかえしているうちに、ドカンと大破局が来るというのがよく言われる「21世紀大恐慌」論だが、そうはならずに、投資家がいつも微妙な株価の変動を気にしていなければならない状態がもっともっとあたりまえになるのが、これからの動きではないか?
むしろ、そういう張り詰めた状況に嫌気をさした連中が、「やっぱり昔の方がいい」と思い始めることの方が危険だ。そうなると、戦争経済で時代を後戻りさせるしかないからだ。しかし、それは構造的に無理(だって、たとえばインターネットを廃止できますか?)だから、かえって事態を混乱させ、資本主義のその先にあるものを見えなくさせるだけである。
要するに、「神経戦」で行くか、「武闘戦」で行くかしかないのであるが、歴史の「長い持続」(アナール派的な意味での)からすると、「神経戦」の果てにある何かに期待をかけたほうが文明論的には利口だろう。


2008年 10月 24日

●気圧・血圧・DNS

気圧の谷間で気力喪失状態のうえに、休みが重なり、アルコールばかり摂っていた。それにもかかわらず眠れないので、BINDの設定に取り組む。
いまどきDNSを自分で立ち上げるなんてよほどの暇人だが、インターネットの仕組みがよくわかる。BINDの設定はやっかいで、10年ぐらいまえから何度も挑戦したが、とことんのところはわからなかった。今回は、それを極めてやろうというわけだ。
KDDIがヴァーチャルホスティングで、サーバーをまるごと貸し、しかもIPアドレスを2本も提供してくれてたったの2千数百円(月)というので加入し、そこでBINDを立ち上げたのだ。
ホスティングといっても、まさにセッティング以前の、買ったばかりのワークステーションのような状態なので、すべてがこちらの腕次第。OSは、RedHatの流れをくむCentOS5。
やってみると、OSがとても使いよい設計になっていることもあり、それほどむずかしくはなかった。すべてをリモートからのコマンドラインでやるので、腕が疲れた。気づくと、食事もそこそこに20時間以上、起きていた。