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2022/06/11

トランプ・クーデター 6月10日の公聴会

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せっかく「シネマノート」に仮移住してネット映画評をしばらく書くかなんて思っていて、「シャイニング・ガール」評の2回目を書きながら、米東部時間9日午後7時(日本時間10日午前9時)のライブ中継を見始めたのがいけなかった。</p>
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もう、2021年1月6日の議会襲撃についての下院特別委員会による調査は、効果がないなと思っていたので、腰をすえて見るつもりではなかった。が、視聴者数の多いプライムタイムに開催するという意気込みにも現われているように、襲撃の背後にトランプがいるという前提での追求プレゼンは、なかなかよく出来ていた。</p>
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しかし、こういうネタは、マスメディアやSNSがたっぷり取り上げるだろう、こんなものあつかっても、先日の「<a href=刑務官と受刑者の脱獄」のときのように、読者から「ワイドショウでやってましたよ」なんて言われるのがオチだろう・・・と思い、発作的に書いてしまった文章を破棄した。

ところが、熱心に調べたわけではないが、日本の新聞やネットニュスーでは、入れ込んだ記事が見当たらなかった。やっぱり書いておくべきではないか、自分の記憶のメモとしても、書く必要があると思い直し、以下のような文章を復活することにした。

YouTubeには、10日の公聴会のヤマ場をうまくまとめたのがいくつもあるので、経過については書かない。が、強調しておかなければならないのは、少なくとも第1回目の段階では、この事件の最深部にいると思われるスティーヴ・バノンのことが問題にされていない。

バノンの証言拒否

わたしは、昨年1月6日の「襲撃」のライブ配信を見ながら、こう書いた:

いま、米国時間の午後3時半をすぎたところだが、1pmから始まった大統領認証の会議は、議事堂内に乱入者が出て、中断。トランプは、その「勇気」をたたえているらしい。やっぱり裏にスティーヴ・バノンがいるな。『Occupy Unmasked』の応用だ。
そして、翌日襲撃の黒幕で、その手口を詳述した。スティーヴ・バノンについては、「雑日記」の2016年から何度も再チェックしてみてくれるとありがたい。バノンは、トランプの「悪」の元凶である。

「仁義」の新旧

しかし、問題は、トランプが「悪」なのは、彼がモラル的に「善」ではないからではない。すでに書いたように、大統領は、いずれもギャングスターであるから、モラルのようなものは通用しない。問題は、トランプが、時計の針を逆に回した旧ギャングスターの「仁義」に凝り固まっており、それを、新「仁義」にも精通したバノンがうまくあやつろうとしている点だ。

トランプとその1党は、新「仁義」の世界で「仁義なき戦い」を起こしたわけだから、「民主主義」という新「仁義」をタテマエとしているいまの議会制度のもとでは、この挑戦には報復しなければならない。

しかし、この相対性を熟知しているスティーヴ・バノンは、昨年秋、特別委員会が証人として喚問しようとしたが、それを拒否した。委員会は、議会侮辱罪で訴追するといきまいたが、バノンの口から乱入の仕掛け人でございますなんて証言を得られる可能性は皆無である。

今月末まで行われる公聴会で、バノン問題がどの程度出てくるかは全く期待できないが、そもそも、ロシアのウクライナ侵攻も含め、新・旧のロジックがないまぜになって現われたり消えたりするといういまの時代には、せいぜい、フェイクメディアを自分流に再構成して自分の推理と判断を楽しむ――要するにヤジウマに徹するのが、リアリティに見合っている。

高みの見物

その意味で、昨年の1月9日に、CNBCが「トランプ・ジュニア」が撮って内輪に流したのをすっぱぬいたというスマホ映像で、すでにトランプがこの「仁義なき戦い」に関わっていなくはなかったということが歴然としていたのを思い出す必要がある。

ジュニアの姿も映っているのは、自撮りだろうか? 部屋の奥にはプロ用のカメラで撮っている姿もちらりと見えるから、もっと鮮明な映像も存在するのだろう。

ちなみに、カメラに向かって踊ってみせたのは、元FOX Newsのキャスターにしてトランプの選挙対策アドヴァイザー、その後はトランプ・ジュニアのフィアンセにおさまったキンバリー・ギルフォイル (Kimberly Guilfoyle) である。

が、いずれにせよ、このスマホ映像でも、トランプとそのファミリー、そしてその一党が、自分たちで仕掛けた反乱の成行きを多数のモニターでライブ放映をながめ、「いいぞいぞ」と興奮していたことがわかる。

トランプの横にいる金髪の女性は、イヴァンカ・トランプだろう。彼女は、今回の公聴会では、父親の「選挙は盗まれた」というトランプの一貫した主張(言いがかり)には否定的だったと証言しているのだが、ならば、こんな父親といっしょに高みの見物はないだろう。

高みの見物は、「一般人」の特権だが、「仁義なき戦い」を画策しながら、手下にやらせて高みの見物をするような奴らの末路はあわれなものではなかったっけ?