「シネマノート」  「雑日記」top

2013年02月25日 07:22pm JST

アカデミー賞の〝常識〟と〝非常識〟

アカデミー賞が決まった。毎度のことながら、わたしは、今年こそとんでもない選考が行われ、〝常識〟では考えられない受賞(その私的提案が〈希望的選択〉だった)が登場することを期待するが、今年もそれはなかった。〈一般的予測〉という名のもとに、わたしが頭をかぎりなく〝常識〟に頽落させて予測した19部門のうち、たったの3部門でしか異動はなかった。しかも、はずれたその3部門に関しても、〝常識〟の枠内での異動であって、驚くべきことは全くなかった。
わたしは、『リンカーン』が〈作品賞〉、スピルバーグが〈監督賞〉に入るのが最悪の〝常識〟路線だと思ったが、それは避けられた。『アルゴ』には、まだ(創造的な)〝非常識〟を(観客が)引出す若干の余地がある。〈監督賞〉も、アン・リーなら、その努力に報いることだけはできる。しかし、〈美術賞〉の『リンカーン』は、バランス取りの結果である。『アンナ・カレーニナ』のほうがすぐれていることは、〝常識〟だからである。
〈作曲賞〉で、ジョン・ウィリアムズ(『リンカーン』)を避け、マイケル・ダナ(『ライフ・オブ・パイ』)を取ったのも、さんざん賞をもらっているジョン・ウィリアムズには遠慮してもらって、〝若手〟を優先するというバランス操作が感じられる。わたしは、かねがね〝もうJWはいいだろう〟という気がしているのだが、今回の彼の音楽は、アメリカの多声的な要素を意識していて、悪くないと思っていた。

予測のプロセスと作品コメント・トップ