2001-10-03/粉川哲夫

 

九月一一日の事件後、ブッシュ政権は、ほとんど事件を予期したかのように、ただちにアフガニスタンとタリバン/サマラ・ビン・ラディンを「敵」と断定し、事実上の宣戦布告を行なった。それは、ブッシュ政権の成り立ちや支持背景からすれば当然の反応であったが、問題は、この動きにぴったりとシンクロしたアメリカのマスメディアだった。ふだんなら横並びを嫌うアメリカのマスメディアが、このときばかりは、国家メディアになりきってしまったのである。
インターネットやマスとは異なるメディアが次第にこの事件をあつかうようになって、マスメディアが報ずるような「国民的一体感」や八〇パーセント以上のアメリカ人が「敵」への報復を支持しているなどということがでたらめであることがはっきりするわけだが、今回もまた、アメリカのメディアの「多元主義」などというものが、いかにいんちきなものであるかを見せつけた。
湾岸戦争のときは、周到にマスメディア対策を講じたペンタゴンも、今回は、突然の攻撃であったことと、肝心のペンタゴンもやられたこととで、前回ほど周到なメディア管理をすぐに徹底させることはできなかったが、マスメディアの方が自動的に政府の要求を先取りした。
皮肉なのは、日本のテレビや新聞は、そうしたフィルターのかかった向こうのマスメディアから得た情報を垂れ流しているだけなので、日本にいると、アメリカにいるよりもピュアーな「パン・アメリカン」メディアに接しているような状況に陥ることである。
現在、アメリカでは、コミュニティと連携したラジオ、テレビ、新聞、そしてそれらをメディア的にリンクするだけでなく、地域をこえた連携を可能にするインターネット・サイトが相当数存在する。これらのメディアは、さまざまなデモへの呼びかけやレポートはむろんのこと、地域で起こったアラブ人/回教徒への迫害を報道し、救援のネットワークを広げるなど、マスメディアとは異なる機能をはたしている。
活動家(アクティヴィスト)のレベルでは、今回の事件は、その最初のねらいがどこにあり、誰が仕掛けたかは別にして、結果的に反グローバリズム/反人種差別主義/反テロリズムへの攻撃であったという見方をする方向がコンセンサスを得ている。
メディア・アクティヴィズムのレベルでも、シアトル以来、反グローバリズムの運動は、インターネットのしなやかな活用とあいまって、体制の無視できないところまで来ていた。七月の反G8のデモの際、近年、反グローバリズム運動の最も強力なネットワークの一つである「インディペンデント・メディア・センター」(IMC)のイタリア支部も機動隊の急襲を受け、メンバーの多くが暴行を受けたが、911「攻撃」は、そのグローバルな拡大版でもあるわけだ。
アメリカの多様な現状や、いずれあらわになるはずの動きを知るには、いまやただのスペクタクル(見せ物)と化したマスメディアではなく、IMCのサイト(http://www.indy.media.org/)やその豊富なリンクサイトを参照する方が確かであろう。

(『思想運動』2001-10-1編集部)