【代替版】
インターネットは急速に普及したが、その利用者の多くは、メールと情報の検索・収拾で終わっている。これは、インタラクティヴであることを本領とするインターネットとしては、半端な使い方だ。インターネットには、まだまだかぎりない使い方がある。
ストリーミングもその一つであり、すでに一部では過熱しはじめている。これを使うと、ホームページで音声や映像を長時間流すことができるので、テレビ局やラジオ局でストリーミングのぺージを開設するところが増えているいる。
ＣＮＮ、ＡＢＣ、ＢＢＣといった大手の放送局は、みな、ニュースのストリーミング・ページを開いている（＊）。映画会社も、新作のプロモーションをストリーミングで流している。普通では聴くことが難しいラジオ局の音をライブラリーにしているサイトもある。（＊）
ただし、重要なのは、ストリーミングは、ライブで音や映像を流せるということだ。しかも、放送局のようなプロでなくても、家庭のパソコンにソフトをインストールし、カメラとマイクを接続すれば、それだけで立派のライブ「放送」が出来るので、ホームパーティを流したり、仕事場にいる自分の姿を連続的に「放映」しているような個人サイトもある。自分がお産する姿を実況中継して、顰蹙を買った女性もいた。アリゾナのマリコパ郡の保安官ジョー・アルパイオは、「ライブ中継が犯罪防止に役立つ」として、留置場や署内にカメラを据え、常時ライブ放送をしている（＊）。
いまのところ、ライブといっても、回線状態によっては、途切れたり、そのまま受信できなくなってしまったり、まだ安定した動作は望めない。これは、ＣＮＮやＢＢＣのような大手のストリーミングでも同様で、かえって、このような有名サイトの方が、アクセスが集中するために、うまく見えないことが多い。
その意味でも、ストリーミングは、マイナーなサイトのほうが断然おもしろい。カメラワークや音質を気にせず、とにかく「旬」を流しているサイトのほうがこのインターネット技術が活きるのだ。（＊）
今後、回線スピードが上がるのつれて、ストリーミングのサイトを、いまホームページを立ちあげるのと同じような気軽さで作る人がふえてくるだろう。そしてそのとき、ストリーミングのサイトを立ちあげる人が全部が全部、たえず新たな表現にみちあふれている人ばかりではないから、そのサイトの使い道としては、一種の「放置カメラ／マイク」が主流となるはずだ。
いまあの友達は、どうしているだろう？ と思って電話する人は多い。それと同じように、パソコンのウェブページをクリックすると、その人やそのファミリーの姿が映り、呼びかけると、声が聞える――こういうことがストリーミングでは可能なのである。
ただ、問題は、プライヴァシーやコピーライトである。インターネットの皮肉は、技術的には出来ることがいくらでもあるのに、プライヴァシーやコピーライトを侵害するので出来ないとことが多いということだ。そのための規制も増える一方だ。このまま行くと、せっかくのテクノロジーをがんじがらめにしてしまう可能性がある。
新しいテクノロジーは、出始めには必ず、既存のモラルや規制からのさまざまな抵抗があるが、やがて、それ自身が持っていた潜在力を発揮する方向に移りはじめる。
１０年後、あるいは２０年後、このストリーミング技術が余すところなく使われるときのことを想像してみると、人々は、いまよりももっと自分を「露出」することに熱心になるだろう。人々は、ある意味での「ヌーディスト」になるだろう。
その場合、２つの方向が予測できる。一つは、たとえ自分を「露出」しても、各人が、個々人の生活を尊重するので、あえて「プライヴァシー」などを持ち出さなくてもよいような社会が形成される可能性。もう一つは、とにかく、自分をアグレッシブに「露出」することが必要であるような超競争社会の出現である。あなたは、どちらを選びますか？

＊http://www.real.com/に多くのリンクがある。
＊http://www/crime.com/
＊http://interface.pirate-radio.co.uk/では、毎日２４時間ノンストップでＤＪが入れ替わり立ち替わり、ライブを「放置カメラ／マイク」で聴かせ、見せる。

（HAPERS 保田園佳）

●ぼくの行く美容院のスタイリストが、初めてのお客さんのカットは難しいといっていました。原稿も同じです。今回は、ご希望に添えると思います。[初稿が気に入ってもらえなかったので書きかえた]