「シネマノート」  「雑日記」


2006年 11月 19日

●都電パフォーマンス "Mapping Airwaves 061119"

昨日と同じことをやるのは芸がないので、今日はもう2台の(つまり4台)ラジオを持って大塚駅へ。あいにく小雨が降りだす。やな予感。都電に乗り込むまえ、企画者の田上さんと話したら、昨日のパフォーマンスでわたしがノイズ音をラジオから流しながら、それに合わせて体を動かしているようにとっているらしいので、がっくり。あの音は、全部、わたしの体の角度で創られたものなのだ。すでに半分やる気を失ったが、都電に乗り込んで2度びっくり。昨日の倍ぐらいの客で、通路にも人が立っており、パフォーマンスをする場も、ラジオを置く場もない(十字形に置くつもりだった)。おまけに、都電が動き出してからも数人が車内を動きまわっている。とりあえず置いたラジオの音も人の足で邪魔される。これじゃ、ラジオ同士のフィードバックもでたらめになってしまうし、わたしが電磁波の位相を変えようとして体を動かしたり、硬直した姿勢をとっても、観客には、何をしているかわからない。お客は、椅子席の30人限定と聞いていたのは、わたしの錯覚だったのか?
自分の耳にとって、満足できる音が数分出た瞬間もあったが、全体としては惨憺たるもの。14分間の悪夢。わたしには、やはり、やめべき企画だった。


2006年 11月 18日

●都電パフォーマンス "Mapping Airwaves 061118"

まえ(10/21)に書いたように、いろいろ問題ありで、いい結果にならない予感がするが、チラシの情報が行き渡り、ドタキャンしづらくなった。早起き(?)して大塚駅へ。どうせやるからにはと「新作」を徹夜で準備。都電内に電波を流し、その反射と直射をラジオで受けて音にするもの。わたしの体の動きで電波の流れ方が異なり、それに体の動きの音がノイズ的に加わる仕掛け。
用意した2台のラジオのパワーは十分ではなかったが、都電のスペースの反射でなんとかうまくいく。進行方向の先端部の末端部に置いたラジオがハウリングを起こし、わたしにとっては予想以上の結果。似た状況でリハをするわけにはいかなかったので、車内に同じ周波数の電波でも出ていたら、策を考えなければならない(しかし、もち時間がたったの14分だから、途中で予定変更もできない)と思っていたが、その必要もなかった。14分後、王子駅で降り、終わり。タクシーで帰り、ビールを飲んで寝る。


2006年 11月 17日

●キャンパスの空をカラフルな花火が染めた

花火職人を自認する山崎望さんが、「身体表現ワークショップ」のゲストを担当してくれた。編集した映像をふんだんに使った花火の歴史、花火の作り方等々のプレゼンのあと、打ち上げ花火の大小の玉(火薬は抜いてある)を学生(生徒?)に触らせたり、コントロール装置を見せたあと、全員を外に連れ出し、打ち上げ花火のセッティングをさせる。
夕方5時、中央線の線路を背景にした芝生の上に多彩な火花が打ち上がった。一瞬の美にみな感動。火吹きや焚き火とは異なる、エクスタシー的感動。企画者としては、無事に終わり、ホッ。
夜、仕事場で、明日の都電パフォーマンス(「ゼロ次元以後のアクションアート」)の構想と準備。やっつけみたいだが、いつもこんな調子。実は、今日、大学に行きがてら、都電に乗り、床下のモータから発する電磁波をリサーチした。かなり強いのが出てはいるが、残念ながら、単調な流れで、音にしても面白くないと判断した。そうなると、車内に電波を飛ばし、そのマッピングを音波化することにでもするか。
href="https://utopos.jp/about_jp.html"jp/TKU/shintai/


2006年 11月 16日

●ストリーミング・インタヴューとパラレル・セッション

昨日うまくいかなかったので、今日の0時をきして、OKNOの学生たちがわたしにネット経由で質問をすることになった。こちらはストリーミング回線を2本立ち上げて、早々とスタンバイ。USBカメラとマイクだけの簡単システムでIRCチャットを立ち上げたコンピュータのまえで待機していると、まずチャットで質問事項が入ってきた。それから1分ほど遅れて、一人の女性がマイクのまえで質問。
まずは、わたしが、コミュニティ放送タイプのラジオからミクロな送信に関心を移してきた経緯についてきかれる。次は、わたしのビデオレクチャーに写っていた渋谷での公衆電話ジャック(IDSDN回線を使ってストリーミング放送をやる)について。どちらも、似たような質問をされたことがあるので、あまり新鮮味はなかったが、とても真摯な感じの質問で、ついつい熱を込めて説明してしまう。
終わって、別のストリーミングシステムの方に移り、機材のチェック。2時間後の午前3時半からのジャック・フォシュアとのデュオに備える。
あっという間に3時半になり、演奏がスタート。こちらは、ブリュッセルにしか開いていないが、向こうは、一般に回線を開いている(本当は、演奏用に独立させればよかった)ので、アクセスが殺到したのか、向こうからの映像も音も凍ってしまう。
結局、今回も「ブライド・ゲーム」になったが、そのおかげで、「リーモート・パラレル・セッション」というコンセプトを思いついた。これは、相手がどんな音を出しているかを知らずに、勝手にプレイし、先方は先方で、こちらはこちらでミックスしたり、選択したりするのだ。視聴者は、そのどちらかの結果を聴く。こういう構想でストリーミング放送を立ち上げるのもいいではないか。
終了後にすぐ届いたメールでは、反応はよかったらしい。
少し眠り、大学へ。ゼミで、「007」について話したら、10数人の出席者の誰一人として、ジェイムズ・ボンド映画を見ていないという。用意した『007/カジノロワイヤル』(1967)はまずかったかと後悔したが、もう遅い。とりあえず、見せたが、「007」を知らずに楽しむのは無理というもの。
時間がありそうなので、駅に走り、JRで有楽町へ。ビックカメラにより、月曜に別の講座で見せる予定のDVDを購入。ビデオはあるのだが、劣化が激しく、大画面では感動度を半減させてしまうのだ(VHSテープの劣化問題は深刻だ)。タクシーに飛び乗り、松竹へ。
エチオピアのユダヤ人難民をあつかった『約束の旅路』を見る。重い映画である。
http://www.okno.be/index.php?id=979


2006年 11月 13日

●ストリーミングの陥穽

ベルギーのOKNOの企画でジャック・フォシュアとリモート・デュオをやるので、その「リハ」をやることになった。ひとつには、ストリーミング・システムを用意するOKNOがあまりネットによるリモート共演になれていないので、テストしたかったらしい。
こちらは、早々と映像と音を送信し、向こうでもバッチリと映っていることがわかった。先方がこちらの映像と音をループにしてきたので、それがよくわかる。
しかし、先方の調子がイマイチ。すぐに凍ってしまうのだ。こちらはリアルエンコーダとリアルサーバーを使っているが、先方はQuickTimeのDSSでやっている。実を言うと、ファイルを読ませるのは、いま、どのシステムでも似たりよったりになってきたが、ライブとなると、依然としてリアルの軍配があがる。わたしは、この10年あれこれ実験をやってきて、そういう結論に達した。
こういう場合、ダメなシステムでは、いくら工夫(たとえば送信のビットレイトを落とす)をしても、たいした結果は得られない。
結局、ジャックが演奏するときは、こちらへは、映像なしの音だけが届くというやり方でやるしかなくなった。「ブラインド・ゲーム」である。それも悪くない。
少し眠り、大学へ。「表現と批評」という講座で、コスタ・ガブラスの『ミュージック・ボックス』を見せる。ビデオなので、画質が悪いが、ハリウッド映画と四つに組んで筋をまげないガブラスのしたたかさを再見。あとで学生の感想を読んだら、「ホロコーストに縛られていては何も生まれない」というのがあった。つまり、「ホロコースト」なんか忘れてしまえというわけだ。
ところでアドルノは、「アウシュビッツ以降の文化は、すべて、その文化に対する切なる批判も含めて、ゴミ屑である」(『否定の弁証法』)と言ったが、アドルノは、文化が「ゴミ」だから、もう文化にこだわるのはやめようと言ったわけではない。逆に、徹底的に「ゴミ」で行こうじゃないの、と言ったのだ。ホロコーストに縛られて何も生まれないのなら、何も生まないということにとどまった方がいいだろう。
仕事場にもどり、大急ぎで食事をし、夜10時からベルギーのOKNOへネットを通じておこなう「送信機ワークショップ」にそなえる。ストリーミングの方は、すでに完璧に作動開始。
9時から、あらかじめ送ったわたしのビデオレクチャーを見せ、送信機を作るということの前提を理解しておいてもらうことになっており、向こうからの映像に会場のスクリーンが見え、わたしのビデオが映っている。
メールで合図があり、10時ちょっきりに、送信機の作成をライブで披露。裏話をすると、あまりトチったことがないのに、今日は、一回だけトチった。15分ほどで作り上げ、バッテリーの電源を通電したら、電波が出ない。ヤバイと思って目を凝らすと、なぜか、間違ったコンデンサー(色は同じ)をつけていた。誰が置いといたんだ?! カメラの射程からはずれたところで、さりげなく交換。
このあと、ブリュッセルでは、15名のOKNOの学生が同じ送信機を作った。向こうから届くストリーミング映像を見ていたが、視聴者が多いのか、途中で止まってしまう。リロードを繰り返すのに疲れ、深夜には、モニターのまえを離れる。ビールを飲み、一息つく。
http://www.okno.be/index.php?id=972